従来の低いダイナミックレンジ(HDR)画像での写実性を超えた、超写実性光学表現を可能とする表面下散乱モデルを構築することを目的とし、本年度は、表面下散乱数値シミュレーション手法の開発ならびにHDR画像の記録方式の開発、そして表面下散乱現象の実写画像取得実験を行った。 1.表面下散乱数値シミュレーション手法の開発:表面下散乱現象を高精度にシミュレーションする手法を開発した。新たに開発した手法では、物質を微小球ボリュームで離散化し、単散乱だけでなく2重散乱も考慮して散乱現象をシミュレーションすることができる。本研究成果は学術雑誌に投稿中である。 2.HDR画像の記録方式の開発:高精度散乱シミュレーション結果の記録のために、HDR分光分布情報をコンパクトに記録する方法の開発を行った。本記録方式では、異なる基底関数を併用した正規直交基底変換を用いて寄与の小さい係数を削減することでコンパクトにデータを保存する。表示の際はトーンマッピング手法を用いることにより幅広い輝度を再現して表示することができる。本研究成果に関して学会発表を行った。 3.表面下散乱現象の実写画像取得実験:半透明アクリル板や大理石などの表面下散乱が顕著な物質の撮影を行った。ダイナミックレンジの広い計測を実現するために、撮影の際にシャッタスピードを変えて撮影を行い、得られた複数枚の画像からHDR画像を作成した。これにより、シミュレーション結果との比較を行い、表面下散乱による輝度分布の定性的な整合性を確認できた。
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