本年度は仮想空間と実空間の融合のためのモデルの作成とシステム設計、および簡単な実験を行った。モデルは、 (1)観光地やショッピングセンターなど対象とする空間のスポットモデル、 (2)そこをウォークスルーする歩行者モデル、 (3)2つの空間を融合するための融合モデル、 (4)歩行者間のコミュニケーションを支援するためのコミュニケーションモデルからなっている。実空間と仮想空間をつなぐものとして (1)実空間の位置方位を取得できる位置方位点、 (2)位置方位点から発火されるECAルール、 (3)アクションによって起動される(仮想空間を含む)コンテンツが主に設定されている。さらにこれらモデルが有効な応用として、観光案内、ショッピング以外に、屋外学習、美術館・博物館案内、オリエンテーリング、RPGなども具体的に検討した。 システム構成は、計画系(仮想空間から実空間の情報取得)、歩行ナビ系(実空間と仮想空間の連携)、フィードバック系(実空間情報を仮想空間に反映)の3つのサブシステムからなっており、これらを中心にした設計を行った。このシステムを有効にするものとして (1)位置方位点を示す非接触型RFID、 (2)歩行者情報を示すUHF帯のRFID、 (3)情報提示のための電子ペーパー機器がある。本年度は電子ペーパー機器の購入が困難であったため、代替品として携帯PCで実験を行った。 本年度の本研究の独自性は、歩行者支援のための抽象モデルの構築、仮想空間と実空間を融合することによる強力な支援の提供、の2点である。本年度は電子ペーパー機器の購入が困難であったことおよび撮影機器の設定の不十分さのため、上記のモデル構築とシステム設計、および簡単な実験にとどまったが、次年度は電子ペーパー機器の購入が可能になったため、電子ペーパー機器を利用した情報提供の有効性を示すプロトタイプシステムの実装を行う予定である。当初予定していた岡山県の世界遺産候補は落選したため、代りに鬼ノ城等の具体的な空間での実験を行いたい。さらに今後の電子ペーパー機器のための検討を行う予定である。
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