大規模シミュレーションに対するリアリティを主眼とした大規模可視化実現へ向けての基礎技術研究として、地球シミュレータセンターで開発された超水滴法と呼ばれる計算概念に基づく積雲形成シミュレーションによる大容量超水滴データを用い、写実的可視化手法の研究開発を実施した。本研究では、上述の超水滴(多数の雲粒を代表させる計算粒子)の数10GBにおよぶ数値データを背景に、光多重散乱計算による光の強度を可視化することにより、(超)水滴の空間分布、粒径分布を反映させた雲のリアルな表現を目指している。 この目的のもとに、放射伝達計算コードの開発をこれまで実施してきた。本コードの基本構成はCG技術におけるモンテカルロ・レイトレーシング法と類似のものであるが、精密な光学計算のため、フォトンには属性として波長を与え、Mie散乱コードを使用し精密な多重散乱過程をシミュレートするように設計されている。計算コストが極めて高いため、コードは分散並列処理型とし負荷分散を念頭に置く。またポスト処理により異なる画角からの描写を効率よく得られるようにするため、光多重散乱計算と画像合成処理を分離するフォトンマッピング法を応用している。 計算の厳密さのため、本コードには極めて計算コストの高い処理が多く含まれている。このため、コードの高速化に向けた改良・改善を進めてきた。本年度は特に、高速化の上で特にボトルネックとなっていた処理(入力データの読み込み、プレ処理、Mie散乱のモンテカルロ計算の効率化など)を中心にプログラムデザイン、データ構造およびデータフローについて全体的に再点検し改良を進めた。リアリティの高い色調再現を目指したマルチ波長計算の効率的な手法とそれに基づく画像合成手法、バーチャルリアリティ技術を用いた立体的な可視化方法について検討した。
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