研究概要 |
最終年度である22年度は、奥行き知覚のモデル化に取り組むとともに、カーナビゲーション応用に向けた基本検討を行い、以下の成果を得た。 (1)奥行き知覚の支配的生理的要因の明確化とモデル化 本研究では、拡張現実感と同様の技術により実空間中に仮想対象を重畳表示する。このような環境において表示像のピント位置、両眼視差、運動視差の視覚系に仮想対象の奥行き知覚を生じさせる3つの生理的要因が、それぞれ視覚系に異なる奥行き情報を与える場合、通常では両眼視差の影響を最も強く受ける数m程度の像位置においても,観察者が運動しているときは運動視差の影響を最も強く受けるという新しい知見を得た。この結果を基盤として、特に運動視差が他の奥行き手がかりと独立して提示される場合の奥行き知覚のモデル化に着手した。 (2)ナビゲーション応用に向けた基本検討 上記(1)で得た結果に基づき、人工的運動視差により生じる奥行き知覚をカーナビゲーションに応用する際、表示する仮想標識の像位置を観察者から数mの近い位置に設定できるため光学系を小型化できること、そしてこれより車載装置として現実的なサイズで装置化が可能であることを明らかにした。 また、ナビゲーション用として仮想標識をフロントガラス前方に実風景に重畳して表示する場合、視認性を考慮した最適な表示方向は前方水平線上の数度上方であることを明らかにした。そして、この方向に表示する場合のフロントガラスと装置の光学系構成の配置における必要条件を明らかにし、この条件が現状の大半の乗用車において適用可能であることを明らかにした。
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