研究概要 |
本研究では,近年グラフ理論の分野で提案されたグラフのb彩色という概念に着目し,グラフのb彩色が満たすべき2つの制約を,それぞれ局所的な制約と大域的な制約に対応させることにより,グラフの彩色に基づくクラスタリングの基礎理論の確立と,この理論に基づくアルゴリズムの開発を目指す. 上記の目的の実現のために,本年度は主にグラフに対する彩色に基づいてクラスタリングを行う手法の基礎理論の確立を目指した.具体的には,下記の項目を実施した. 1)与えられたデータ集合をグラフ構造に変換する手続きを定義し,データの表現形式を特徴空間からグラフ表現に変換する手法を定式化した.具体的には,対象データに応じて個々のデータ間の非類似度を測るための非類似度関数が与えられると仮定し,非類似度に対する閾値に応じて,閾値を超える非類似度を持つデータ同士を辺で繋ぎ,その非類似度を辺ラベルとすることにより,与えられたデータ集合を無向グラフに変換する方法を定式化した. 2)グラフ理論に基づく様々なアルゴリズムの開発を行っている研究者と密な議論を行い,グラフの彩色を半順序関係から捉えることで見通しのよりアルゴリズムの設計が可能になることが明らかになった.この知見を反映してグラフ構造に基づいて効率のよいクラスタリングアルゴリズムを設計するため,色の半順序関係に関する広範囲な文献調査を行った. 3)文献調査で得た知見に基づき,彩色数と各頂点に接続する辺数の最大値との関係を考察し,その知見を整理した.
|