研究概要 |
第一に,コミュニケーション創発の基本モデルを拡張し,網羅的にシグナルの進化する領域の探索を行った.その結果,個体間が複雑にカップリングしたコミュニケーション(たとえば振動型)は容易には創発せず,譲るタイミンをある時点で知らせる収束型が,きわめて限定されたゲーム領域で創発することが確認された.第二に,環境応答移住に基づくマルチレベル選択モデルに基づくエージェントベースモデルにより,語彙の進化における話し手の利他性の進化を検討した.語彙行列を持つエージェント間で言語ゲームを各グループ内で総当たり式に行う.次に,設定した移住関数(利得に対する移住確率で定義)を用いて,移住個体を選び,グループ間で移住させる.その後,利得に比例した割合で子孫個体を複製する.この際,一定確率で突然変異を起こす.これを繰り返す進化実験を行った結果,マルチレベル選択が話し手の利他性を進化させることが確認できた.また,ビッカートンの仮説を支持する結果も得られた.第三に,ロボット間で優良遺伝子の交換というインタラクションを行う実進化型ロボットシステムに,先行評価を行う共進化系を導入するロボットシステムの構築を行った.その際,環境評価系として,単純な関数を採用した場合とニューラルネットワークを使用した場合を比較した.実験の結果,基本的にはこの問題設定では,単純な関数を使用した場合にスムーズな進化が実現することがわかった.
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