研究概要 |
本研究では,局所的な情報に基づいて自律的に動作する多数のエージェントが,互いに協調してボトムアップに構成するシステムにおける,個々のエージェントの有用な設計法の創出を目指す.これは,次世代知的交通制御システムや,電子市場システムなどの,次世代型の巨大かつ複雑なシステムを構築するために必須な主要基盤技術となる.これまでに,複数の交通情報を効率的に利用する最適な交通情報提供手法を提案している.これは,VICSやプローブシステムなどノイズを含む情報源に対し,統計情報やフェロモンモデルを利用してより正確な渋滞情報を獲得する手法である.加えて交通制御システム構築に際しては信号機制御も重要である.従来の信号機制御は集中制御型であり,安定性が低く動的な交通変化への即応も困難である.そこで,昨年度はマルチエージェントモデルとフェロモンコミュニケーションモデル,そしてばねモデルを組み合わせた分散自律型の信号機制御法の提案を行った.具体的には,個々の信号機に自律性を与え,隣接信号機とローカルに協調することで,ボトムアップ型の制御を行うもめである.まず,ばねモデルの導入により,動的に現示の比率(赤信号や青信号の比率)を変更することでの交通状況への即応方法を提案した.そして,現在は手作業にて制御されている,幹線道路に対するグリーンウェーブ型の隣接信号機間の現示切り替えタイミング自動制御を,マルチエージェント協調モデルを利用することで,動的にグリーンウェーブを行うエージェント集合を自己組織化させる方法を提案した.しかし,昨年度での研究を含め,従来研究においては信号機制御における重要な要素である「クリアランス」を考慮しておらず,本年度では昨年度の提案モデルにクリアランス制御の導入を行った.これにより,個々の信号機の最適な周期も変動することになり,より複雑な制御が要求されることとなったが,協調モデルを対応させることで,引き続き高い性能を発揮させることに成功した
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