平成21年度は、1. エージェント社会におけるデフォルト推論の研究、2. エージェントの相互作用による社会的推論の研究、3. マルチエージェントによる共同プランニングの研究を行った。以下、それぞれについて概要を説明する。1. エージェント社会においては、個々のエージェントは不完全な情報を持っているとされ、各エージェントは情報交換を行いながら協調して問題解決を行う。不完全な情報下での推論方式としては人工知能におけるデフォルト推論が知られているが、本研究では社会的デフォルト論理の枠組を導入し、不完全な情報下で個々のエージェントがデフォルト推論を行いつつ協調して問題解決を行う方法を定式化した。2. マルチエージェント社会では複数のエージェントが異なる社会的場面において協調、競合し、個人的目標や社会的要求を満たすために行動する。本研究では論理プログラムで表現されたマルチエージェントシステムを想定し、エージェント間の相互作用を異なるプログラムの解集合の相互作用として定式化し、その結果を解集合プログラミングによって計算する方式を導入した。3. エージェント社会において共通の目標を達成するためには、各エージェントが共同してプランニングを行い、目標を達成するため協調して行動する必要がある。本研究ではエージェントの行動を記述するアクション言語をマルチエージェントシステムに適用し、複数のエージェントが目標を達成するために交渉を行いつつ共同してプランを構築し、個々のエージェントがとるべきアクションを決定するための理論を構築した。
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