研究概要 |
本研究では、大規模問題に対応できる効率的かつ汎用的な最適化アルゴリズムを開発するために、低精度近似モデルを用いて探索効率を向上し、目的関数の評価回数を,削減することを提案する。近似モデルにより目的関数を近似し、近似値を用いて探索を行うことにより目的関数の評価回数を削減する研究は従来から多数行われている。しかし、これらの研究では精度の高い近似モデルを必要とするため、近似モデルを学習する際に試行錯誤的な近似モデルの選択や学習時のパラメータ調整を行う必要があるという問題、近似モデルの学習時間が大きくなるという問題が存在し、汎用的な最適化には適していなかった。これに対して、本研究では学習が不要な低精度近似モデルを有効に活用できるように、(1)探索点の大小比較の際に近似モデルを用いた大小比較を行い、大小比較の結果を推定する、(2)低精度近似モデルの近似誤差を補うために、誤差余裕パラメータを導入し、安全な大小比較を行う、というアイデアを「比較推定法」として提案した。比較推定法において、学習が不要な低精度近似モデルとして提案したpotentialモデルを用い、最適化アルゴリズムとして進化的アルゴリズムの一つであるDifferential Evolution(DE)を用いたpotentialDEを考案した。potentialDEを単純な単峰性関数,変数依存性の強い関数,悪スケール関数,多峰性関数という典型的な4種類の関数に適用し、DEと比較して関数評価回数をそれぞれ57%,14%,15%,49%削減できることを示した。また、誤差余裕パラメータをより正確に設定・制御するために、比較推定の成功率に基づいて誤差余裕パラメータを動的に変化させる方法を提案し、同じ関数について評価回数をそれぞれ64%,28%,26%,51%削減できることを示した。さらに、我々が開発した制約付きアルゴリズムへの変換法であるε制約法をpotelltialDEに適用することにより、効率的な制約付き最適化アルゴリズムεDEpmを提案し、従来法と比較して代表的な13個の制約付き最適化問題が1/4以下の関数評価回数で解けることを示した。
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