研究概要 |
1.カーネル法の特長の一つに,ベクトルデータ以外の様々なオブジェクトに適用可能であることがあげられる.我々は動的時間伸縮(DTW)距離から,時系列データのためのカーネル行列を開発した.DTW距離は必ずしも3角不等式を満たさない擬距離なので,DTW距離に基づくカーネル行列は一般には正定値ではない.我々は半正定値計画法(SDP)を用いて,カーネル行列の正定値性を保証する.時系列データの局所的な幾何を最もよく保存するようなカーネル行列を求めるため,近傍保存埋め込み(NPE)と呼ぶSDP定式化を提案した.また,NPEのサンプル外拡張であるOSEも提案した.二つの応用問題,すなわち時系列データの分類,類似検索のための埋め込みにより,我々のアプローチの妥当性を示した. 2.時系列データのラベルづけには,これまで隠れマルコフモデル(HMM)やそれを階層化した階層隠れマルコフモデル(HHMM)が用いられてきた.近年,生成モデルであるHMMに代わり,識別モデルである条件付確率場(CRF)が提案され,多くのタスクにおいてHMMの性能を上回ることが確認されている.われわれは,HHMMに対応する識別モデル,階層隠れCRF(HHCRF)を開発した.これまでに脳波(EEG)データのラベルづけ実験を行ない,従来手法であるHHMMより高い精度を得ている.しかし,脳波データは,階層モデルというHHCRFの特長を必ずしも生かせるものではなかった.本研究では,明確な階層性を持ったスポーツビデオデータを用いた実験を行ない.HHMMとHHCRFの性能を比較した.
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