本研究では、生産システムを制御工学的な視点、経営組織論的な視点、そして知識情報システムとしての視点からモデル化し、現在多くの製造業で実際に行われているものづくりの高度化に貢献する理論とツールを明らかにすることにある。本年度は、理論的な検討を一方進め、実際に現実世界を変化させることを通して、抽象化された情報モデルの世界と、実際の実世界との関係をどう位置づけるべきかについての理論のフレームをほぼ固めた。 昨年の研究を進め、具体的な実験装置を用いて以下のようなテスト環境を構成し、より検討を深めた。自動化された生産システムと、人間による多面的なサポートとを組み合わせることで、予期せぬ状況に対応できる半面、あらかじめ自動化されたプロセスからの逸脱によって、返ってシステムの動作が不安定となる。このような人間と機械系からなる広義のシステムについて、本年度は、機械が作業者からの不意の介入を受け付けることができ、さらにその内容を新たな知識の追加とみてプログラム自身をダイナミックに変更できるかどうかの実験を行った。これによって、よりオープンなシステムのモデル化につながるヒントをえることができた。 また、情報システム同士がメッセージを交換し合う情報プラットフォームによる実証実験を、生産現場に関係する複数の市販アプリケーションソフトウェア間で行った。ここでは、情報の形式的な定義とともに、おの意味の定義をあらかじめ確定させることが困難な状況において、オントロジーの利用が効果的であることを確認することができた。知識定義のためのプロファイルの利用方法について、この実証実験をとおして、おおよその構成をまとめることができた。
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