本研究は、製造業などで実際に行われているモノづくりのしくみを、制御工学的な指摘、経営組織論的な視点、そして知識情報システムとしての視点からモデル化し、人と機械とが一体となって日々変化していく生産マネジメントシステムの理論的な検討を行うとともに、効果的な情報システムを提案することを目的とした。特に、従来の制御システムやFA(ファクトリーオートメーション)システムが、あらかじめ設計された機械からなる物理世界を対象としていたのに対して、本研究では、経営組織がもつマネジメントの要素を含む場合のモデルである点が特徴となる。 まず、第一の研究成果として、人間と機械が協調しながら知識を追加修正していくアーキテクチャのプロトタイプを作成し、日本機械学会にて発表した。ここでは、機械が人間の作業の一部を請け負うのではなく、人間が機械の作業を請け負うという状況を想定し、その副作用として知識が人間機械系に蓄積していく。また、別の研究成果として、独自に進化した機械(ソフトウェア)に対して、事後的に両社のコミュニケーションを確立するためのAPI(アプリケーションインタフェース)を設定する方法を提案した。これらは、ともに、システムの系内に知識ソースが存在し、自己組織化するモデルとして位置付けられる。 また、進化型情報システム開発手法に関する実証研究として、中小製造業2社に対して、ITカイゼン型のシステム開発を実施した。1社が仮運用の中でその有効性を示し、もう1社についてもプロトタイプシステムによる効果検証の結果、有効性が示せた。実証実験のポイントは、当初は最小限の機能からスタートし、使い込むうちに新しい知識や機能が付加されていく点にある。本研究では、こうしてシステムを連続的に拡張していくために必要なアーキテクチャを、ビジネスモデルの観点からも論じることができた。
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