研究概要 |
1. 特異な発声である吸気発声や,歌声にとって重要な様々な声区(フライ,地声,裏声)の発声に関して,ステレオ高速度デジタル撮像を行った.それらステレオ高速度画像に関し,三次元空間における粘膜波動についての予備的検討を行った. 2. 高速度デジタル画像に基づく,サブハーモニックな発声の音源モデルを信号モデルとして実現した.多変数喉頭音源モデルのパラメータを,高速度デジタル画像から抽出される声門面積関数を参照して決定し,左右声帯の非同期振動や,左右声帯の同期したサブハーモニックな振動などについて,音声合成を行った.これらは従来知られているLFモデルや,Rモデルなどの音源モデルでは実現不可能であるサブハーモニックな発声が合成可能であるという点で新規性を持つ.また,聴取実験の結果,二重声の合成に有効であることが示された. 3. 高速度デジタル撮影について,撮影条件の検討を行った.病的な音声など特異な発声も含め,撮影速度と画像としての折り返し歪の生成について,抽出する特徴量との関係の上で撮影例を解析して臨床上,研究上の撮影条件を考察し有効な撮影速度の下限を明らかにした. 4. 声帯振動の物理モデルにおける,非周期振動,準周期振動が起こるパラメータ空間を推定した.バネ質量モデル(2質量モデル)を用い,生理的観察から求められた圧力,声門面積関数等を参照し,振動様式が一致するようにパラメータ推定を行った. 5. 吸気発声時の内喉頭筋電図を記録し,生成時の喉頭調節のメカニズムについて予備的検討を行った.
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