研究概要 |
筆圧痕は筆圧によって紙に形成された圧痕であり,本研究ではこの筆圧痕を可視化する装置の開発に取り組んでいる.本年度はスキャナヘッド部の両サイドにある2灯の光源の内,一方の光源の照射角(斜光線入射角)を85度固定とし,もう一方の光原については照射角を30度~70度の範囲で可変な構造に変更した.85度側の光源で照明してスキャンすれば,筆圧痕の浅い(筆圧の弱い)部分まで全体を可視化できて文字判読が可能となる.また,照射角可変側の光源で照明した場合は,照射角が小さくなるほど筆圧のより強い部分のみが画像上に残っていくことを明らかにした.これにより,本可視化装置が筆圧痕文字の可視化だけでなく,筆圧の強弱パターンという書字者の特徴抽出にも利用可能なことを明らかにした 前年度は可視化装置のアイデアの原理的な検証という観点とテーブル回転角の精度の点から,ターゲットとしてメモ用紙程度の小さな範囲の画像撮り込みと画像合成にとどめ,その成果について学会発表したが,本年度はテーブルの回転機構に改良を加えて回転角精度を向上させ,便箋やA4用紙といった大きなサイズの用紙までの画像合成と可視化に対応可能とした.これらの成果と全年度までの成果をまとめて国際会議に論文投稿し,年度内に採択を受けた さらに本装置の応用として,プリンタの拍車痕(プリンタの紙送り機構として用いられている拍車が紙に残す凹み)の検出を試みた.可視化装置の光原を近赤外LEDアレイに交換することにより,染料系インクの影響を受けることなく拍車痕を可視化できることを明らかにした.また,この近赤外斜光線の入射角が60~70度のときに影や反射が視認しやすくなることを明らかにした.これらの成果については,2010年秋に4件の学会発表を行なった
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