研究概要 |
本研究では、バイタルサイン(心電図、心拍数、血中酸素濃度)の情報に加えて、口腔機能(会話、笑い、摂食嚥下)と行動の情報により生活リズムを分析する。本年度は,バイタルサインセンサと口腔機能のセンサを組み込んだネックバンド型無意識・無拘束センシングデバイスを開発する。本年度の研究成果を以下に示す。 1) マルチチャネル-ネックバンド心電計:首回りの皮膚表面の電位分布を心筋の電気双極子モデルで計算し,この電位分布に基づき,心電図の双極誘導において振幅が最大となるように電極を配置したネックバンドを考案した。また,1対の電極では電極の接触圧や位置ずれにより雑音が混入する問題に対してマルチチャネル電極を配置し,3対の関電極で誘導した心電図の加算平均を行うことで体動に頑健なマルチチャネル-ネックバンド心電計を開発した。 2) 咳嗽の検出:咳嗽は、肺や気道から口腔から呼気を強制的・破裂的に排出させ,繰り返して生じる気管・喉頭・呼吸筋の反射的な収縮運動である。急激な呼気の排出に伴う音とともに頸部にも急激な動きが発生することに着目し,首もとに接着型マイクロフォンと傾斜センサを一体化させたネックバンドを開発した。このネックバンドセンサにより口腔咽喉音と頸部の動きを同時に計測することにより,日常生活における咳嗽を98%識別することに成功した。口腔咽喉音による検出方法では笑いなど繰り返される音情報と誤識別される問題を解決した。 3) 接触型ネックバンドマイクロフォンにより,首もとの皮膚表面から口腔咽喉音を検出する。口腔音の時間-周波数分析により、呼吸音、音声、摂食・嚥下に関わる特徴を抽出し、会話、摂食嚥下、誤嚥の検出法を考案した。老人介護施設の協力のもと60歳から90歳の被験者の口腔咽喉音を収集し,会話や笑いの周波数成分から、会話時間(発声時間),爆笑回数の計測ならびに誤嚥検出率80%を得ることに成功した。
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