平成22年度は美術絵画の分光反射率復元精度の評価方法とカラーアピアレンスモデルを復元された分光反射率に用いて多様な照明環境下において画像再現を行い、当初の研究目標を十分達成することができた。 従来の研究では色票を被写体として撮影し、その画像データを基に各色の分光反射率を復元し、計測値と比較することによりその復元精度を評価していた。色票では計測機の計測範囲内で色は一様であるので計測値と同一色の任意の画素について復元した分光反射率を単純に比較することにより復元精度を評価することが可能であった。他方、美術絵画において色は色票のように一様ではなく、計測機の計測範囲内においても色は変化しかつこの計測領域内に多くの画素含まれているために、計測値と復元値とを単純に比較することにより復元精度を評価することはできない。本研究では油絵、水彩画、日本画の3種類の美術作品を用い、撮影画像データから分光反射率を復元し、各絵画について18点分光側色計を用いて分光反射率を計測した。各絵画について計測機の計測範囲に含まれる全ての画素について分光反射率を復元しそれを平均した値と計測値とが良く一致し、3つの絵画についてそれぞれ18点のでの復元誤差を求めた結果、従来の1画素での評価結果と比較すると復元誤差が約半分以下になり、美術絵画の分光反射率の復元精度を評価する為には計測装置の計測範囲内にあるすべての画素について復元された分光反射率の平均を求める必要があることを明らかにした。更に、前年度の研究成果である分光反射率の特徴を用い絵画の分光反射率の復元を行い、従来の方法による復元精度より約3倍程度の大幅な復元精度を向上させることができた。この高精度に復元された分光反射率を色の見えモデルCIECAMO2に適用させ、多様な照明の輝度と色温度の下でカラー画像再現を測色的に較正されたディスプレイに表示させ評価を行った。
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