研究概要 |
本研究は,人と人とのコミュニケーション成立条件の数理的理解とその工学的応用に向けての基礎研究である.生物の生存に不可欠な実時間情報処理とコミュニケーションが密接に関係していることに着目し,実時間情報処理の数理的本質を理解し,それを支える処理要素を探求することを目的とする.本年度の成果は以下の通りである. 1追跡運動モデルにおいて,誤差フィードバック要素とターゲット速度フィードフォワード要素にリズム成分を与え各リズム要素の周波数,位相差を変え数値実験を行った.その結果,ターゲット位相に対する手動運動の位相プロファイルの形状はフィードフォワード要素の影響が強く,両者のリズム周波数がターゲット周波数と同一もしくは2倍のときで,かつ,ある程度相補的に働くときに運動先行性を示した.これは,生体の感覚運動システムにおいて,フィードバックとフィードフォワード制御が同時ではなく,相補的に働いていることを示唆する. 2視覚提示条件を変えた円運動に対する二者間実時間相互作用実験を行った.ターゲット表示を断続的にすると,速度相関がよくなり,協調的に動作する様子が見られた.ターゲット表示を断続的にしたターゲット追跡運動では,先行性が強く観測されるので,二者間協調には運動先行性が重要な役割を担い,かつ,視覚提示を変化させることで,被験者の予測強度を変えることで二者間協調状態を制御できる可能性が示唆された.
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