研究概要 |
振動刺激に代表される外部刺激に対して,ヒトが示す生理反応と心理反応に着目した反応推定数理モデルの基礎的な可能性を探ることを研究全体の目的とした。本年は特に,数理モデルの定義を念頭において,その実験条件を探るために,心理反応のみではなく生理反応にも関わる「情動」の位置付けを明確にすることに重点を置き,これまでの研究より.得られた結果の見直しを行った。その中で,これまでに単に心理反応であるとしてきた「快適性」が,本研究においてモデル化しようとしている「情動」に対応するものではなく,「情動」は意識下のものであると理解する方が適切であると同時に,心理反応とも生理反応とも明確に分けることができない領域に位置されるものであることが見えてきた。つまり「情動」は,意識される「快適性」とは次元が異なり,ある外因に対して快か不快であると意識的に答えられる形のものではないことが明らかになってきた。これまでの実験においては,この意識の表層部における「快適性評価」を持って情動モデル」を定義しようと試みてきたが,その研究姿勢に大きな問題ぶあることが明らかとなった。この知見をもとに,2年目以降は実験方法を大きく変えることにより,振動環境下における情動と生理・心理反応との関係を解明することを計画している。また,情動に関する考察を進める中で,これまでの知見をもとに2編の論文を作成し,実験において得られた結果の整理を行った。これらの結果と情動の関係を結びつけてゆくことを今後の課題としている。
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