研究概要 |
振動刺激に対する人の快・不快のメカニズムの検討から始まり,何らかの外部刺激に対する人の情動メカニズムのモデル化を試みてきた。これまでに振動刺激,1/fゆらぎを持った三次元形状による視覚刺激および触角刺激による人の情動(心理的変化)の追跡とそのモデル化を試みてきたが,被験者の生理・心理反応による情動評価には再現性が乏しく,さらには個人間,個人内の評価のばらつきが統計的な処理の範囲を超えているとの理解ができ,これまでの研究手法での情動モデルの構築の可能性に疑問を感じている。そこで,これまでの研究の流れを,物理特性や生理特性の中で客観的な測定可能な特性を「理」,客観的測定が困難な心理特性を「情」とし,「振動→不快→快→快感覚→情動→情と理(感じることと分かること)の関係→情・理のモデル化→創造過程モデル(情・理モデル化のケーススタディ)」として捉え直し,千葉大学工学部の専門科目の一つである「医療機器設計論」の中で実施しているデザインプロセスの図式化を試みた。デザインプロセスにおける"発想の飛躍(気づき)"をモデル化するために,一般的なデザインプロセスを表現する平面(デザインプロセス平面)を定義し,それに直交する平面を,プロセスを通してデザイン実践者が持つと想定できる感情やイメージを示す平面としてのイメージ平面を定義した。その結果,実際のデザインプロセスを通していくことで醸成されると考えられるイメージ,および創造への動機づけをイメージ平面に置くことで,"気づき"を図式化することの可能性を示唆した。このデザインプロセス平面(実平面)とイメージ平面(虚平面)によって構成される空間の考え方は,「心地よさ」や「嗜好」などに見られるように同じ外部刺激に対して異なる心理反応を示す人の特性を記述することにも適用できると考えている。
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