研究概要 |
飲料パッケージを事例として,飲料の種類を触知覚のみによって識別できるような形状と表面性状の異なる触覚記号を提案し,視覚障害者を対象として,その妥当性を検討した。その結果,提案した8種類の触覚記号のうち5種類では形状と表面性状のみで直感的に飲料の種類がほぼ推測できることが確認できた。この実験によって触覚記号の形状は飲料の原材料のイメージの影響が大きいこと,飲料の種類の識別には形状だけでなく記号の表面性状も大きく寄与することなどが明らかになった。具体的には,茶系飲料,コーヒー飲料,炭酸飲料により粗い表面性状を持たせることによって,他の飲料と明確に区別できたことから,触覚記号の表面性状が情報伝達に有効であることが示された。触覚記号と飲料の種類の対応関係を伝えてから一週間後に行った実験では,乳飲料と炭酸飲料を除く6種類について8割以上の正答率が得られた。しかしながら,今後の課題として,牛乳と乳飲料の識別や炭酸飲料とアルコール類の識別について検討していく必要性が示された。 これと並行して千葉県立千葉盲学校と千葉点字図書館において,視覚障害者を対象とした触知覚の可能性に関する聞き取り調査と異なるテクスチャを用いた構成玩具の活用可能性に関する実験を実施した。提案した構成玩具は積み木のような形状で,それぞれの平面に永久磁石を埋め込んだものであ。これとグリッドを用いることで,視覚障害者にも容易に空間が構成できるように配慮したものである。これを用いて,全盲の視覚障害児を対象とした空間認知能力の実験を行った。これにより,構成玩具に異なる表面性状を用いることにより,論理的に空間を把握することが容易になるため,空間認知能力を向上させるのに有効であることが示唆された。
|