1.音楽にアーティフィシャルな触覚刺激を利用した体感音楽聴取方法 今期は、異質の振動触覚を体の異なる箇所に与えた場合の感性への影響、振動触覚の時間経過が感性に与える影響を検討した。まず、音楽を構成する楽器の中で、リズムを与えるドラム音とベース音からそれぞれ取り出した振動を別々の振動付与体で体の別々の場所に与えたとき、音楽の印象がどのように変化するのかを実験した。ドラム音とベース音の振動を分離して取り出すために、MIDIによる音楽ソフトを用いた。また、振動付与体としては、手のひらに振動を付与する振動素子と体の背面の幅広い箇所に体ごと振動を与えるボディソニックを用いた。その結果、手のひらにベース音に基づく振動触覚を与え、体の背面から体全体をドラム楽器音による振動を与える音楽聴取形態は、それぞれ単独に振動触覚を与える音楽聴取形態に比べ、臨場感や魅力を増すとの結果が得られた。次に音楽聴取時に2つの振動触覚刺激を長時間与えた場合、時間の経過によって、それぞれの印象がどのように変化するのかSD法による主観評価を実施した。その結果、時間が経過すると共に、疲労感や嫌悪感が増すということが分かった。 2.感性増幅を意図した視聴覚コンテンツにおける触覚情報の利用方法 今期はテレイグジスタンス時に触覚刺激を加えた場合、および3D・CGゲームに触覚刺激を加えた場合の感性評価を行った。まず、ラジコンカーに無線カメラを取り付け、その映像をHMD(ヘッドマウントディスプレー)に無線電波で送り、そのHMDを装着した操作者がラジコンカーを操作するテレイグジスタンス環境を構築し、ラジコンカー操作時に自動車の振動や音を付与する感性評価実験を行った。振動はボディーソニックを用いて与えた。SD法による因子分析を行った結果、インパクト因子や楽しさ因子においては、HMDだけ、HMD+振動、HMD+音楽およびHMD+エンジン音に比べ、HMD+エンジン音+振動、およびHMD+音楽+振動の因子得点が飛躍的に大きくなることが分った。 次に、加速度センサーのついたHMDを装着して、アバターの主観で頭を動かした方向に画面が動くように設定されたシューティングゲームを行う場合の感性評価実験を行った。シューティング時の効果音とその低音成分による振動をボディーソニックに与えた場合、臨場感と楽しさ因子が飛躍的に大きくなる結果が得られた。
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