研究概要 |
製品の最終仕上げ段階においては人間の優れた感性が高い品質と正確な評価基準を確立している.我々は,この熟練者の優れた感性をデジタル知識として保持し,伝承するシステムの構築を目的としている.従来の技術伝承と異なり,我々が目指すところは,(1)人間感性を評価できる“物体の質感"を自在に再現できる表示,(2)その質感を作り出す加工作業を手や体の動きとして記録,(3)その作業記録と質感変化が関連した特徴情報の抽出と記録を可能にする,対話型システムの構築である.そのためにH20年度,(1)表示装置としては実物体(立体)に様々な質感が投影できるマルチプロジェクションシステム,(2)加工作業の記録としては赤外光を利用した高速位置や手形状の計測システム,そして(3)作業DB構築のためのSQLサーバ構築を行った. 立体物体への質感投影は3台のプロジェクタ像の幾何学的輝度的一致を取り,重ね合わせに対する自動校正システムを構築した.これにより様々な形状立体に自在な質感を発生させることができるとともに,熟練者の観察位置に依存しない自由視点表示が再現可能である. 赤外線を利用した手の位置や形状計測には構造光による3次元計測を適用した.通常,3次元構造光計測は複数枚の画像取得が必要で動きのある動作には不向きであるが,机上一定高さ範囲にある手のみを検出し,その局所領域のみ3次元計測することにより,従来の10倍近い速さで形状の計測が可能である.この形状測定にかかる時間は約1秒であり,作業のプロセスをタイミングごとに計測する本用途なら十分適用が可能である.
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