研究概要 |
平成20年度は主に,計算機環境の整備,理論的研究の準備段階として,主たる対象として経済をとり上げ,そのスケーリング特性を顕著に示す長期記憶性を,購入予定のワークステーション上で大規模シミュレーションを実行することで徹底的に調べる.(1)スケーリング特性を示す各種のデータから,非線形システムの重要性を検証する.特に,本年度の前半では各種の経済データを収集し,予備的な研究としてその長期記憶性などスケーリング特性の多様な性質を購入予定のワークステーション上でシミュレーションを実行し,自己相似性の特徴を整理する.非線形モデルとしてカオスの可能性を追求するとともに,スケーリング特性を持ったマクロな経済時系列が,ミクロな挙動のいかなる特徴に依存するかを調べる.特に注目すべき従来の研究によると,線形要素の大規模な集団的挙動が,ある種の環境において長期記憶が生じる可能性が指摘されているが,これはミスリーディングな理論で,小規模な集団的挙動においてもスケーリング特性を導く理論が必要である.経済データを精査することで,このような考え方の正統性を考察する.(2)以上の研究を発展させ,具体的なモデルの構築に向けて研究した.特に,経済データの示す長期記憶性と,記憶モデルの示すスケーリング特性の類似性に着目して進めている.
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