「格子ロトカボルテラ模型」という確率模型での研究を通じて、集団レベルでのリダンダンシー(ムダ、いいかげんさ)の重要性に着目するようになった。生物進化における最適化を考えるとき、単なる目先の最適化だけでなく、ゆとりやリダンダンシーを考慮しなくてはいけない。多くの長い間未解明のリダンダンシーが、理論的および統一的に取り扱えることが分かってきた。長期的なスパンでの最適化や、生態系というシステム全体の中での個々の生物を捉えることの重要性が分かってきた。 今年度はとくに、イースト菌の培養時における年齢構成ダイナミックスを研究した。我々の研究によって次のことが分かった。 1) 培養の変局点で娘細胞が、母細胞よりも先に出産をストップさせること。 2) 同じく変局点で、高齢の母細胞が一斉に爆発死(アポトーシス)すること。 これらの成果はPlos Oneという雑誌に掲載される予定である。一斉爆発死=アポトーシスは、実験的に確認する前に、シミュレーションで予測した。この研究によって、格子ロトカボルテラ模型(シミュレーション)が重要であることが分かった。
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