研究課題
人間の視覚系はいくつかの視覚機能モジュールの結合によって構成されていると考えられている。この仮説に基づき、明るさパターンのエッジ情報が、ステレオ視差からの奥行き知覚機能にどのように統合されているか、その統合機構を探り、数理モデルを構築することは興味深いテーマである。本年度は、これまで提案してきたステレオ視差検出のための反応拡散系に、明るさエッジの情報を統合する数理モデルを提案した。すなわち、拡散によって連続的に結合されたFitzHugh-Nagumo方程式について、抑制性の拡散係数に非一様性を導入し、そこに明るさエッジの情報を統合した。このとき、エッジにおいて極めて強い抑制性拡散を課す一方、活性化因子の拡散係数は一定とした。統合するエッジ情報を検出するモデルが必要となるが、従来より我々が提案してきたFitzHugh-Nagumo方程式を離散的に結合したエッジ検出モデルは、2値画像を扱うものであった。そこで、可能な限り少ない計算量(方程式の数)で、明るさ画像に対しても適用可能なような修正エッジ検出モデルを提案した。構築したステレオ視差検出機能と明るさパターンのエッジ検出機能を統合した数理モデルを計算機アルゴリズムとして実現し、いくつかのステレオ画像に対して適用した。その結果、奥行き不連続性の強い領域において、従来のエッジ情報を統合しない反応拡散アルゴリズムや明るさエッジにおいて拡散係数を弱めるアルゴリズムと比較して、ステレオ視差検出の精度向上を確認した。これらの結果より、明るさエッジの情報から奥行き不連続性のある領域を予測すること、及び、その奥行き不連続領域において抑制性拡散を強める情報統合機構の妥当性を確認した。
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International Journal of Circuits, Systems and Signal Processing
巻: 5 ページ: 105-115