研究概要 |
平成20年度は主にマルチエージェントシステムの創発現象の定式化と計算機上の仮想環境における性能評価を行った.詳細は以下の通りである. 1.マルチエージェントシステムにおけるミクローマクロ・ループの現象について,統計物理学的手法を用いて定式化を行った.具体的には,マルチエージェントシステムにおける個々のエージェント(自律的に行動する主体)を統計物理におけるミクロな粒子,またエージェント同士の相互作用により生じる秩序を統計物理におけるマクロな現象と捉える. 2.上記の枠組みの下で,マルチエージェントシステムにおける協調行動の創発を目的とした新しい大脳情報処理模倣型強化学習システムを提案した.提案システムは,他エージェントの状態予測機能と階層とモジュールの自律構成機能を併せ持ち,外部環境の変化に柔軟に適応する能力を持っている.各モジュールは,次状態の予測を行う状態予測器と行動決定を行う行動制御器を内部に持つ.提案システムでは,ヒトの大脳における情報処理機構に倣い感覚器官から高次機能まで抽象レベルを階層状に表現し,また同一レベルにおいてモジュールを複数配置することで,状態空間の整理を行い,学習の効率化を図っている 3.計算機上の仮想環境におけるシミュレーションにより,提案法がマルチエージェント環境において,協調行動を創発していることを示した. 4.次年度以降に行う自律移動ロボットを用いた現実環境における創発現象(協調行動の創発)の実現のための,ハードウェア環境の構築を行った.
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