一種の信号変換機とみなすことで、広く利用されている自己組織化マップ(SOM)であるが、本研究課題では、(1)新しいアーキテクチャの構築、(2)従来とは異なる信号処理技術の開発、(3)工学的な応用、という3点について重点的に取り組む。 まず初年度(平成20年度)は、有効性という観点から、i)時系列信号処理を行う新しいアーキテクチャ構築、ii)SOMを用いたパターン生成技術、を取り上げた。前者は上記(1)(2)に関わる内容で、過去に我々が提案した「Elman型フィードバックSOM」を利用し、筆順を考慮したリアルタイム文字認識課題へ適用した。従来は、20文字程度のデータを辛うじて学習できる段階であったが、競合層活性度を高めることで、位置ずれや時間伸縮に頑健な信号処理を実現した。また後者は(2)(3)に関わる内容で、特許出願中の新技術の改良である。例えばアニメーション作成の過程で、如何に自然な中間画像を生成するかであり、定性的な指針は示せたものの、まだ公表できる段階にはない。これとは別に、欠損部ありの不完全データを扱うSOMを提案し、その有効性を確認した。 これらの研究成果については、ファジィシステムシンポジウム(FSS2008大阪)のほか、国内学会の全国大会や九州支部大会を中心に10件の研究発表を行った。また、本研究課題とは異なる内容を、Int. Symposium on Intelligent Informatics (ISII2008-Kumamoto)などで発表したが、その参加を通して資料収集も行った。なお、一部の成果は学術雑誌へ投稿したが、現在査読中である。
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