研究課題
現在、一種の信号変換機として広く利用されている自己組織化マップ(SOM)について、本研究課題では、(1)新しいアーキテクチャの構築、(2)従来とは異なる信号処理技術の開発、(3)工学的な応用、という3点について重点的に取り組む。4年間にわたる本研究期間の2年目として、本手法の有効性について更なる検討を行うという観点から、i)部分データを取り扱うSOMの新しいアーキテクチャ構築、ii)SOMの逆投影作用に基づいたパターン生成技術の開発、iii)時系列信号処理を行うSOMのメカニズム解明、を取り上げた。1番目については、欠損部ありの不完全データを扱うモデルであり、昨年度に基本的なアイディアを提案し、いくつかの実験結果を得ていたものである。これを整理して国際会議(ISII2009-QinHuangDao)へ投稿したところ、6割弱という採択率を通過して、論文特集号の掲載へと結び付いた。2番目については、残念ながら特に大きな進展はない。強いて挙げれば、前年度に投稿していた学術論文が、ようやく採録決定へ漕ぎ着けたことである。途中で査読作業の遅延に陥ったものの、本年度、原稿修正に取り組んだ結果、次年度以降の掲載が内定している。3番目については、筆順を考慮したオンライン文字認識課題へElman型フィードバックSOMを適用し、位置ずれや時間伸縮を想定した文字パターンに対しても頑健な信号処理が実現できるメカニズムを一部明らかにした。本来の時間伸縮とは、各時刻に与えるデータは学習時と同一で、呈示速度のみが異なるものを意味する。これに対して、我々の自然な感覚での時間伸縮には、位置ずれに類似した特徴を多く含み、位置ずれに対する頑健な信号処理が重要であるとの示唆を得た。この研究成果については、国際会議(ICONIP2009-Bangkok)のほか、国内学会の全国大会や九州支部大会などで報告した。
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ICIC Express Letters 3
ページ: 1381-1386
Neural Information Processing, Part II LNCS 5864
ページ: 865-873
http://www.sens.ee.saga-u.ac.jp/wakuya/