現在、一種の信号変換機として広く利用されている自己組織化マップ(SOM)について、本研究課題では、1)新しいアーキテクチャの構築、2)従来とは異なる信号処理技術の開発、3)工学的な応用、に取り組んだ。また、4年間にわたる本研究期間の最終年度として、i)発散式学習、ii)時系列信号処理、iii)アニメーション生成技術、などを取り上げた。そして、最後に総括を行った。 1番目は、似た属性のデータを近付ける従来の学習法に対して、異なる属性のデータを遠ざける学習法で、同様の結果を得ている。この世の中には、対称的な性質を有するデータも多く、両者を組み合わせることで更なる性能向上が期待できる。 2番目は、筆順を考慮したオンライン文字認識課題への適用例である。基礎技術としては、いわゆる勝者ニューロン数を適応的に変化させることで、位置ずれや時間伸縮へ対応可能な頑健性を確認しており、その研究成果を国際会議で発表し、学術論文誌への掲載に結び付けた。 3番目は、SOMの作り上げる特徴マップが、採用した距離尺度に応じて変化することに着目し、対称性を持つ画像だけを学習させても、非対称な画像を生み出す仕組みを構築した(新しい成果が得られたため、平成25年度へ繰越して実施)。具体的には、区分的な距離尺度を導入することで、例えば顔の場合、目や口などのパーツが入れ替わった新しいパターンが生成できる。また、本手法はSOMの学習機能を利用しており、我々の予想しない意外なパターンができる可能性も大きい。 これ以外に、SOMを用いて佐賀県観光情報を解析しており、将来的には、個人の好みに応じた観光案内などを行うシステム作りも考えている。これと並行してAndroid携帯端末への実装に挑戦し、新たなアイディアを得た。基本的な部分については、すでに研究発表を行っており、今後、この領域を更に伸ばしていきたいと考えている。
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