本年度は自然言語の文書から知識を学習し、それに基づき類推を行うニューラルネットワークに関する研究成果が得られた。ニューラルネットワークは生理学的な知見を活かした処理が可能であり、優れた学習能力が注目されている。言語は脳の中でも重要な機能であるため、ニューラルネットワークを自然言語処理に適用する試みが行われている。また、類推は人間の知能において重要な役割を果たすと言われている。人工知能の分野においては、類推を用いた研究が盛んに行われている。しかし、ニューラルネットワークの学習能力と類推を組み合わせて応用を目指す研究はほとんど行われていない。また、類推を自然言語処理に応用した研究も行われていない。そこで、学習能力を持ち、類推を行うことのできる自然言語処理ニューラルネットワークの構築を目指した。 提案ネットワークの学習では、構文解析器CaboChaによる前処理が行われる。これに基づき、提案ネットワークの結合の学習が行われる。ネットワークの学習では、結合荷重を増やす学習と、結合荷重を減らす忘却の両方が行われる。また、脳の長期記憶部を考慮し、Nグラム辞書が学習の補助として用いられている。Nグラム辞書を用いて、話題の近さを考慮した学習が行われる。類推では、形式的な類推と意味的な類推の二種類の類推が行われる。形式的な類推では、ある単語が出現した際に、過去にそれと組になっていた単語を推論する類推である。意味的な類推は、過去に学習した文の中で、現在の知識と近い文を推論する類推である。これらの類推に必要な知識は、記憶領域に知識を蓄えられる。蓄えられた知識と似た発火パターンが出現した際に、記憶領域が検索される。これにより、類推を行うことが可能となった。実験では、goo辞書やWikipediaから知識を学習し、類推を検証した。実験により提案ネットワークが類推を行えることを確認した。
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