研究概要 |
論文生産に関わる共同研究者間の影響関係についての知見を得ることを目的に,研究者の論文生産状况(生産性,共著ネットワーク上の重要度)と,共著相手のその後の論文生産状況との関連について調査している。平成20年度は,まず,論文の書誌データベースからデータの抽出・整形を進めた。具体的には,Thomson ReutersのScience Citation Index(SCI)データベースのDVD版の,1991年版から2005年版までの15年分を情報源として用い,論文生産性および共著関係の情報を抽出した。抽出したフィールドは,論文名,著者名,(共著者リスト),著者の所属機関の名称・所在地,掲載誌名,出版年である。そして,SCIの主題カテゴリ別収載誌一覧を利用して,分野の区分と分野ごとのコアジャーナルを決定した。 また,計算機科学分野を対象とした予備的分析を行った。研究者およびその共著相手の論文生産状況を説明変数,研究者本人のその後の生産性を応答変数とする重回帰分析において,得られた決定係数はあまり高くなく,過去のパフォーマンスのみによる生産性の説明は難しいという結果であった。ただし,各説明変数について有意な偏回帰数が得られ,研究者の生産性に対し,共同研究者の過去のパフォーマンスが一定の正の影響力を持つことは確認できた。 このような,過去の特性と現在の特性との相関に関する知見を得る分析は,共同研究者間の中・長期的な影響関係についての示唆を得るとともに,論文生産状況(発表論文数など)の予測に応用できるという点でも意義を持つと考えられる。この成果の一部については既に研究発表を行っている。
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