研究概要 |
論文生産に関わる共同研究者間の影響関係についての知見を得ることを目的に,研究者の論文生産状況(生産性,共著ネットワーク上の重要度)と,共著相手のその後の論文生産状況との関連について調査している。 平成21年度は,前年度に検討・設定した観点と指標を用いて,計算機科学分野を対象とした相関分析を行い,相関のパターンについて検証した。具体的には,15年分の論文データを5年区切りで,前期(1991年~1995年),中期(1996~2000年),そして後期(2001~2005年)に分け,各々の時期における研究者の生産性と共著ネットワーク上の重要度に関する指標を計算した上で,それらに基づき,共同研究者間の特性の相関,および基点とする時期における特性と,その後の時期における特性の相関を総合的に分析した。 そして,(1)同時期の特性の相関から得られる,共同研究者間の即時的な影響関係,および指標の代替可能性についての示唆と,(2)異なる時期の特性の相関から得られる,中・長期的な影響関係,および論文生産状況の予測可能性についての示唆に関して検討し,研究協力ネットワークの大域的構造を考慮に入れた指標が,共同研究者のその後のパフォーマンスとネットワーク構築状況の両方に強く関わっていることなどを示した。さらに,本研究のネットワーク分析の枠組みを他の対象(図書館ネットワーク)に適用する可能性も探った。 本研究で得られたような特性間の関連性に関する知見は,実際的な応用面でも,尺度の相関・指標の代替可能性を明らかにすることを通じて,研究評価の効率化の是非に関する示唆を与えたり,また,研究協力のパートナーを選択する際の参考にもなりうるといった点でも意義を持つと考えられる。この成果の一部については既に研究発表を行っている。
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