本研究は、情報セキュリティの相互依存性に着目して、情報セキュリティ・インシデントの経済的影響を定量データ等に基づいて明らかにすることを目的とする。 具体的には、産業連関表を用いた分析により、情報セキュリティ・インシデントの産業部門間及び地理的な波及効果を定量的に分析するとともに、情報セキュリティの相互依存関係の構造的な変化を明らかにする。 平成20年度は、理論的な研究として、Hirschman(1958)以来の後方連関効果及び前方連関効果に関する先行研究を整理して、Dietzenbacher and Linden(1997)などを参照しながら、産業別のICT依存度やセキュリティ対策程度を考慮した新たな方法論に関する考察を行った。この際、情報セキュリティと経済学に関する国際的な学会に参加するなどして、最新の国際的な研究動向を踏まえた研究を進めた。 データに基づく実証分析に関しては、わが国の2000年の産業連関表に基づき具体的なデータに基づく分析を想定して進めていた。しかし、年度末に2005年時点の最新データが入手できたことを踏まえて、当該データに基づく予備的分析を行った。 重要インフラの相互依存性に関する近年の先行研究で提案されているモデルを発展させた新たな方法論を考察し、その適用可能性についての予備的な研究を行った。これらの研究成果については、進化経済学会全国大会(2009年3月)及び日本経済学会全国大会(2009年5月)で発表した。
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