本申請における本年度の研究の進行は、申請書の計画に乗っ取って、順調に進んでいる。本年度は、研究代表者、研究分担者、研究協力者が、それぞれ大学生や高校生を対象にアンケート調査を行い、それらの結果を研究代表者が集計して、その一般的傾向を分析した。さらに、そこから、他者が行う「ケータイのディスプレイを見る行為」に対する印象が多様化していること、「気づき」によって何割かの被験者に変化が起きうることを示した。とりわけ、着信もなく、伝達すべき急ぎの用件もなく、今すぐ見たいWebコンテンツがあるわけでもないにも関わらず、複数の友人達の前でケータイをつい取り出してしまう被験者が多数に上ることは注目に値する。 ここで得られた知見と一般的傾向は、21年度に行う調査に活用するための予備的な位置づけとなる。首都圏の大学生、地方都市の大学生、高校生において、ケータイ利用における一般的な傾向が得られたことから、全国的なアンケートに適用した場合でも、相応の傾向が抽出できることが期待できる。ほとんどのアンケートの設問文は、問題なく被験者に受け入れられたが、いくつかの設問で修整が必要なことが判明したため、修整を適用した。 本研究は、ケータイ端末の普及に伴って、拡がりつつある「ケータイのディスプレイを見る行為」に注目し、その役割と意味を理解することを目的としている。このことは、ユビキタス社会、モバイル社会という言われる社会モデルを、対面的なコミュニケーションにおける観点から理解し直すことを意味する。この観点を持つことの重要性と今年度の調査結果を2つの学術論文(査読付)にまとめ、4つの学会発表を行った。これらの活動を通して、本研究の学術的意味を広く提唱することができたと実感している。
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