21年度は、研究実施計画に基づき、一般のケータイユーザに対して、アンケート調査を行った。実施の結果、1673人から回答を得ることができた。このデータについてのユーザの利用実態としての集計結果を含め、昨年度までのプレ調査、予備調査(539人の回答)をまとめたものを合わせて、3編の学術論文と4件の学会報告を行った。 プレ調査において、公共空間におけるケータイ利用を介したコミュニケーションについては、3つの用法があることが確認できた。また、これらのコミュニケーションは、年齢や性別の影響があることが確認された。これらの用法は、年齢、性別、ユーザが置かれた状況から影響を受けることが示され、ユビキタス社会、モバイル社会における隠れたコミュニケーションを顕在化することができたと考えられる。また、学生を対象にした予備調査においては、ケータイ利用者が、他者のケータイ利用を見ることで、そのコミュニケーションの様相を変化させることがあり、他者の心情や考えをケータイを利用する姿から読み取ろうとする傾向が見られた。プレ調査、予備調査からも、ケータイ利用のコミュニケーションについて、上記のようなユビキタス社会における知見を得ることができた。 研究発表や論文刊行を重ねた結果、多くの研究者から議論と激励をいただいた。また、他大学の学生からも卒業論文の参考資料にしたいからと調査アンケートの詳しい結果についての問い合わせが何件か続くことになった。本研究が、ケータイのコミュニケーションに対して、潜在的ながらも重要な視点を提示できた結果であると確信している。調査実施、論文刊行、研究発表が可能になったのも、本基盤研究の経費があればこそであり、21年度の成果を22年度のための更なるステップにすることを期している。
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