本研究の目的は、情報技術(IT:Informatioll Teclmology)革新が経済成長に及ぼす影響について、利用サイドと提供サイドの両面から産業や企業レベルの実証分析を深め、日本の経済・産業・企業の特徴と成長戦略実現に向けた課題を明らかにするものである。 初年度となる平成20年度においては、次の三点に取り組んだ。第一に、研究に必要な、ハード、ソフト、データ、資料等の体制整備を図ると同時に本研究に関連する国内外の研究者、研究機関、公的機関、企業への精力的な聞き取り調査を実施した。第二に、IT利用サイドの産業・企業に関する国際比較分析として、国際アンケート(日本、米国、ドイツ、韓国)調査結果の個票データをもとに四力国別に多重検定処理を行った。第三に、IT供給サイドの産業・企業分析として、放送や通信などを中心に、技術革新と制度変化の変遷を跡付けた上で、平成20年8月に刊行された平成17年産業連関表(速報)を用いて産業規模の変化をデータに基づき分析した。 これらの調査・研究活動の結果、IT利用サイドでは、日本企業の経営改革への消極姿勢がIT導入効果を削いでいる可能性が示唆されること、また、IT提供サイドでは、中長期的な潮流としてIT機器などのハード中心からからソフト化、サービス化、コンテンツ化が進展していること、さらに、今回の景気後退がこうしたダイナミックな変化を加速させているとみられること、などが明らかとなった。
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