本研究の目的は、情報技術(IT:Information Technology)革新が経済成長に及ぼす影響について、利用サイドと提供サイドの両面から産業や企業レベルの実証分析を深め、日本の経済産業・企業の特徴と成長戦略実現に向けた課題を明らかにするものである。 2年目となる平成21年度においては、次の三点に取り組んだ。第一に、平成21年3Aに刊行された平成17年産業連関表(確報)を用いて、IT提供サイドの産業における生産誘発力や雇用誘発力を計測した。さらに、固定資本マトリクスを用いて、情報サービス産業の設備投資による生産誘発力の計測も行った。第二に、IT利用サイドの企業に関する日、米、独、韓の国際比較分析として、国際アンケート調査の個票データをもとに、それぞれ四力国別に、企業改革の有無がIT導入効果の有無に統計的に有意な影響を与えているかどうかの検定作業を行った。これらと並行して、第三に、関連する国内外の研究者、研究機関、公的機関、企業への精力的な聞き取り調査を実施した。 これらの調査・研究活動の結果、IT提供サイドでは、雇用誘発力の高い上位レイヤーの情報サービス活動が盛んになり、データ・センターへの集約化も進展していること、地球環境問題や情報の価値化がこうした動きを促進しているとみられること、また、IT利用サイドでは、日本企業では諸外国と比べて、企業改革の有無がIT導入効果の有無に影響する傾向が強いことなどが明らかとなった。
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