本研究で対象とするのはタイ国東北部の中でも北部に位置するソンクラム河上流域周辺である。この地域は河川沿いを除いて近代まで農村集落の分布が疎であったことが1950年代の地形図から明らかである。一方で現在はかつての森林地域内に多くの新しい集落が存在する。過去半世紀ほどの間に急速に集落が増えたこの地域の開拓移住ネットワークを空間情報の分析から解明することを目的として、本年度は以下の研究調査活動を行った。現地での調査は海外共同研究者の協力のもとで行っている。 1.予備調査:6月に調査対象地域内で約20村を対象に村長や長老に対する聞き取り調査を行い、この地域における新村の概要を把握するとともに、本調査の対象とする村落の選定を行った。予備調査においては、予想以上に遠方からの入植者が多いことが明らかとなった。 2.本調査:8月下旬からの二週間に、ウドンタニ県バンドゥン郡オムコー区に所在するN村を対象として全世帯に対する対面調査を行い、移住ネットワークの解明に活用するデータの収集を行った。 3.中間発表:本調査で得たデータの一部を分析し、N村の発展段階を明確に区分できる結果を得たことを国際シンポジウムで発表した。内容は梗概集に掲載している。 4.補足調査:本調査で得たデータを整理した結果にもとづき、家族関係や村内の重要施設の位置づけについて、3月下旬に補足調査を行った。またこの機会に来年度以降の本調査対象候補村落での予備調査を行った。あわせてN村を含む周辺地域に関する関連資料の収集を行った。 来年度は1ないし2村で本調査を行い、N村との比較を含めた分析を行う予定である。
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