本研究で対象としてきたのはタイ国東北部のソンクラム河流域である。この地域は河川沿いを除いて近代まで農村集落の分布が疎であったことが約半世紀前作成の地形図から判読できる。一方でかつての森林地域に現在までに多くの農村が切り開かれてきた。過去半世紀の間に急速に集落が増加したこの地域の開拓移住ネットワークを空間情報の分析から解明することを目的として、本年度は以下の研究調査活動を行った。現地調査は海外共同研究者とともに行っている。 1. 図書所収予定論文の執筆:昨年度までの調査で得たデータを分析し、ウドンタニ県N村およびノンカイ県S村の農村開拓後の発展過程に関する論文を執筆した。現在、最終校正段階である。 2. 中間発表:ウドンタニ県N村、ノンカイ県S村、サコンナコン県NC村の3村の発展過程の比較を分析した結果について、GIS関連の国際学会で報告した。 3. 本調査4村目:3月上旬からの三週間に、サコンナコン県ソンダオ郡タースィラ区に所在するK村を対象として全世帯に対する対面調査を行い、本研究で必要なデータの収集を行った。 本研究課題開始当初は、対面調査だけでなく調査票配布調査も計画していたが、平成20年度に行った初回の現地調査での経験から、対面調査でなければ質・量ともに研究目的に沿うデータを入手することが困難であることを実感した。そのため対面調査を主とすることに手法を修正した。3年間の期間中に4村のデータを収集できたことから、今後の分析により、現代におけるタイ国東北部の農村開拓と発展のモデル像について議論を深めて行きたい。
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