1.21年度は、研究責任者がこれまで収集してきた村方文書史料の整理調査をおこなうとともに経済情報を抽出する計画であった。この計画に基づき、これまで収集してきた多摩郡梅坪村「谷津英一家伝来文書群」の調査をおこなった。谷津家に残存する全史料のうち、近世八王子の市に関する史料の翻刻作業を行った。そのうえで、八王子市立郷土資料館所蔵の資料との照合を行い、その記述内容の差異を検討した。 また、同史料館所蔵の「小野家文書」の調査を開始した。この「小野家文書」も千点を超える文書群で、これまでにも同市『八王子千人同心史』編纂の折に調査がなされており、その成果を取り込みつつ紙焼き史料を収集し、データベース化をはかっていくことにした。 2.公開されている史料の利用については、「都市近郊農村」という範疇に入るものを中心として調査をおこなった。当初の計画通り、人間文化研究機構国文学研究資料館や山梨県立博物館、八王子市立郷土資料館蔵の史料群調査を実施した。さらには、姫路市立「城郭史研究室」所蔵の酒井忠恭日記にも、有効な「都市近郊農村」における経済情報の記載がみられることから、当該地において、基礎的な調査をおこない、その画像データを収集した。今後は、この史料の翻刻を行い経済情報の抽出をはかっていく。
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