研究概要 |
1,平成22年度は、2年間にわたり収取した史料の分析作業を進める。特に経済情報という視点から地方都市を取り上げたのであるから、その差異や特色などもここで分析していく予定であった。いくつか比較検討する地域が存在したが、特に、本年度は、近世八王子宿の米相場についての分析を重点的に行った。浅草蔵前に毎年掲示される「御張紙値段」との比較を中心に、そうした経済情報が、どの程度近郊農村に蓄積されていくのかというプロセスを研究した。 2,収集した史料群の翻刻作業も適宜行ったが、その分量が余りにも多かったため、すべてを正確な翻刻史料として整えていくことができなかった。これらの作業を引き続き実施していくことで、これまで発見されてこなかった事実を見いだしうる可能性がある。 3,中央市場での経済情報もさることながら、都市近郊農村の場合、その地域で行われる売買から生ずる相場の変動等に対する関心が高いことが理解しうる。これは当然のことであるが、自らの農業経営や年貢納入の際に関係してくるのが、こうした地方市場における相場ある。従って、それらの情報を得るために、様々なネットワークを活用し、その情報を個別的な家や村自体に収集することがなされたわけである。このような事例が確認できたことは、大きな成果と言えるだろう。
|