研究概要 |
言語研究の最終目標の一つに,実際に言語を獲得し,文の理解と産出が可能であるようなシミュレーションモデルを構築することがある.本研究は,そのような長期的目標に向けて,脳内の言語処理過程の基盤を明らかにすることを目指す.研究代表者は,これまでの研究において,文を単語へと分節化する過程と分節化された単語を認知する過程を包括的に扱うニューラルネットワークモデルSegRegを構築した.当初の研究目標は以下の3点であった.1)成人に新奇な音素系列を聞かせて分節化させる心理実験を行い,モデルの学習アルゴリズムの妥当性について検証する.2)心理実験の結果をもとに,モデルの学習アルゴリズムを改良する.さらに,各種のパラメータについて見直しと調整を行うことにより,より人間に近いパフォーマンスが得られるようにモデルを改良する.3)本モデル拡張し,語形変化の規則を獲得するモデルを構築する.しかし研究開始後に得られた着想,および言語獲得研究の最近の流れを反映し,目標3)より前に,単語の意味の獲得過程をモデル化することを優先することにした. 平成21年度は,従来のより心理学的,神経生理学的妥当性,分節化学習のパフォーマンスを向上させたモデルに関する論文執筆を執筆し,投稿した.また,意味獲得過程を含むモデルの拡張について予備的検討を行うとともに,および成人が新奇語の意味を獲得する過程に関する実験手法の開発を行い,予備的なデータを得た.
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