人にとって大切な思い出を記録し、保存し、そしてそれをその人個人および社会のために有意義に活用するための手法を検討するための基本的な枠組みの検討を進めた。具体的には、(1)人にとっての思い出の意味を考える【思い出の心理学】、(2)人がどのように思い出を保存・管理しているかを明らかにする【思い出の技術】、(3)テクノロジーを利用して思い出を保存するための【思い出の工学】のうち、本年度は、(1)と(2)を中心に進めた。具体的には、成城大学で行っている社会人向けのコースである「学びの森」での活動から得られた知見をベースに思い出のもつ心理的な意味とその実践手法についての考察を行うとともに、社会人(40歳以上が大半を占める)と学生(20歳前後)を対象とした思い出の保存プロジェクト(エピソードを含めた思い出の写真をカルタないしはトランプとして作品にする)を実施した。現時点では、多様な思い出のあり方を明らかにすることを主な目的としているため、若干の試行錯誤を含んでいるが、極めて興味深い知見が得られつつある。次年度以降でさらに理論的な検討を進める予定である。 なお、本研究テーマの目的の一つとして、「個人の思い出を社会的な資産として活かす」ということがある。そのための広報活動として、新聞(日経2008年9月19日夕刊、朝日2009年1月25日)、雑誌(ハウジングトリビューン、2008年12月上旬、下旬号)に協力し、思い出の意味・思い出工学についてのこれまでの検討成果についての報告をしている。
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