研究概要 |
自閉症を含む広汎性発達障害を持つ幼児・児童に対し,非言語情報の理解に関する指導プログラムを策定し,その養育者を含めグループ指導を行った.その結果,発達障害を持つ子どもとその養育者に関し非言語的情報に対する理解に大きなギャップがあることがわかった.その相違点を明らかにするため,支援場面での観察および視線方向・指さし方向・言語情報を統制し実験により調べた.1)視線方向と指さしの統合的利用に関する実験.定型発達児は視線方向を考慮に入れ大人が指示した事物を推測するが,自閉症児は視線方向を考慮に入れずに大人が指示した事物を誤って推測していた.自閉症児は言語と指さしの情報のみで指示を推測することがわかった.2)共同注意時における発話タイミング.定型発達児に対し発話時間を0秒,10秒とコントロールし実験を行った.定型発達児でも10秒と遅い発話タイミングでは語意を誤解して推測する傾向があることがわかった.よって,発話タイミングという情報も指導プログラムを作る上で重要な知見であることが示唆された.3)グループ活動中における自閉症児の行動観察.他者の事物に対する動作や表情から他者意図を,子どもたちがどのように推測しているかということを検討した結果,表情や視線,指さしといった非言語情報から他者意図をくみ取ることが乏しいということが示唆された.そこで他者意図への気づきや自己の感情への気づきを促すための各種ゲームを考案・実施した.これらの知見を発達障害支援活動の養育者ミーティングにおいて報告すると共に国際会議等の学会発表や著書において公表を行った.
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