研究概要 |
本研究課題の最終年度に当たり,認知制御機能と加齢の関係について,これまでに得られた現象に関する追加実験を実施した。本年度,特に実施したのは,数字選択課題(課題切替)ならびにディストラクタ記憶課題(情報処理の抑制)である。 1.数字選択課題の反応時間分析から,若年成人は最も複雑度の高い「不適合刺激に対する数判断」試行において,外的に与えられる課題切替教示により早い反応を行う「促進的な課題切替効果」を示したのに対し,高齢者はそうした課題切替効果を示さないことが明らかになってきている。この現象は,日本人参加者においては,構音抑制を伴う条件でも変わらなかった(英語話者については後日追加実験を行う予定)。このように数字選択課題では従来の知見とは異なる,局所的課題切替の効果が示されたのに対し,課題切替を行わないブロックと課題切替ブロックの比較から得られるグローバルな課題切替効果については,従来の知見通り,高齢者の方が大きな反応の遅れを示す課題切替効果が示された。局所的な効果とグローバルな効果の関係性,ならびに若年成人による促進型課題切替効果がなんらかの方略獲得によるものか否かについて,今後さらに検討を進めていく。 2.通常の条件では年齢に関わらず漢字知覚的同定課題でプライミング効果が得られたにも関わらず,ディストラクタ記憶(1-back線画再認の刺激上に表示される言語刺激に関する潜在記憶)については,日本人参加者ではプライミング効果が得られないことが確認された。日本語話者は高齢者もディストラクタの刺激処理を実施しないめはなぜか,英語/日本語話者間の実験結果とのズレについては,今後,言語処理過程のモデル化から考察を深めていく予定である。
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