研究概要 |
平成22年度は、リハビリテーションにおける治療技術の一つとして行われている,施術者が患者の頸部から身体を微少に揺するダイナミック・タッチ様動作を実験参加者に施す場合(受動条件)と,実験参加者自身が姿勢定位の向上を目的とした動作(「パピー・ポジション」での床上動作)を行う場合(能動条件)とで,立位姿勢の制御にどのような違いが生ずるかを検討した。その際,オプティックフローを利用した視覚制御の効果を検討するため,立位姿勢時の実験参加者の前方に「視覚的構造物」(視覚による姿勢変動の知覚を助けるために作られた立体構造物)を提示する場合と提示しない場合とを比較した。 実験は、健常な成人を対象とし,実験者による頸部からの身体の揺すりを行う受動群、および自身で床上動作を行う能動群に分けられた。各群の実験参加者は、「視覚的構造物」を見る条件と「視覚的構造物」を見ない(構造物のない空間を見る)条件の両条件に参加した。「揺すり」もしくは「床上動作」の2つの実験操作の前後で,静止立位における重心(足底圧中心分布:COP)動揺が測定された。なお、測定条件を同一にするため,「揺すり」は、冨田(2006)によって報告されている方法に従って、同一の施術者が行った。 得られたCOPデータについて分析を行ったところ,視覚的構造物が無い場合は視覚的構造物がある場合に比べて相対的にゆっくりとした周期での変動が小さくなること,また,実験操作を行った後では概して相対的に早い周期の変動が小さくなる傾向があることが示された。今回,揺すり条件と床上動作条件での明確な差を認めることはできなかった。 文献 冨田昌夫2006脳卒中患者に対する急性期理学療法の可能性.理学療法学,33(8),423-428.
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