本研究の目的は、図の読解過程に関する認知心理学的研究では重視されながら、図の意味論的研究では顧みられることがなかった図がもつ高次情報を、日常的なグラフィック表現系のケーススタディを通じて意味論的に分析することである。とくに、一般性の高い(特定の使用者群を想定せず、読解に特殊な専門的知識を要しない)グラフィック表現系に焦点をあてたケーススタディを行い、図が表示する高次情報にどのようなバラエティがありうるのかを、平行抽象モデルに基づく情報論的な観点からを明らかにする。本年度はとくに、商品の年間売り上げや組織への所属関係を表形式に表現したグラフィック表現を対象に、特定の読解課題を課したときに、人間が与えられた図のどこを注視するかについての仮説を立て、実験により検証する。方法としては、最近の注意研究における対象ベース注意や視覚的インデクスの理論を参照しながら、図から高次情報を読み取るプロセスを視線データに基づいて分析した。研究成果は、図の理論と利用に関する第6回国際大会(Diagrams 2010)と空間認知国際学会2010(SC'10)において発表することが決まっている。
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