研究課題
発育過程における環境、特にホルモン分泌、成長因子放出等に深く関わる生体リズムに強い影響力を持つ光環境に着目(光環境は近年子供の夜更かしとそれに伴う夜間高照度への被爆が問題提起されている)、ラットとよりヒトに近い霊長類であるマーモセットを用いて出生後から光被爆環境を変えることで、成長後の行動への影響を調べている。1)ラットを用いた実験新生児期からの光環境による多動性の検討生後40日までLD12:12(通常の環境)およびLD1:1(1時間ごとに明暗を繰り返す)の環境で飼育すると成熟後も恒常明でのリズムが維持され外界変化に対して柔軟に対応できないことがわかった。そこで行動解析により詳細に調べたところ、新規場面での多動傾向を示すことが、組織化学的・薬理学的手法によりこの多動性は脳内のドーパミンの増加に関連しかつメチルフェニデート投与により改善されることが昨年までの研究でわかっている。さらに、本年はドーパミン受容体のmRNA発現を調べたところ前頭葉と基底核の両方でD1/D5の発現量が正常と異なっていた。また、ドーパミンおよびノルエピネフリン輸送因子のmRNA発現に関しても検討し正常環境下のラットと発現してくる時期が変化していた。シンポジウムで報告しているが現在学術誌に発表準備中である2)マーモセットの実験高度な認知機能との関連はよりヒトに近い霊長類を用いるのが好ましいという指摘がある。そこで、比較的生育期間の短い霊長類であるコモンマーモセットを用いて一腹から得られた新生児を正常な光環境およびラットの実験で得られた行動異常を起こしやすい人工的環境(条件1:恒常明、条件2:恒常暗(ディムライト下)、条件3:通常環境(LD12:12)とで飼育し経過をしている。行動量日内変化、メラトニン量、ビデオ解析による社会性行動などを指標にしてラットに見られた行動変化が観察されるかを調べた結果から、不安傾向による社会性行動の変容があることがわかり、霊長類においても発達期の光環境が重要であることが示唆されている。引き続き臨界期を調べる研究を継続している。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 403 ページ: 178-183