研究概要 |
データから得られる推定値の信頼度を計算するために,データのランダムネスを高精度で計算するリサンプリング・アルゴリズムの開発を目的とする.これまでに提案したマルチスケール・ブートストラップ法では頻度論の立場で統計的仮説検定の不偏な確率値(または信頼度)を近似計算することを試みてきた.これを発展させて,本研究では頻度論だけでなくベイズ法の立場で事後確率の計算,および,両者の融合を目指す.ベイズのみならず頻度論的にもマルチスケール・ブートストラップ法を拡張して適用範囲を広げる. 本年度は以下の点について研究を行った.1.2007年度統計関連学会連合大会講演報告集(p.117)の予備的な結果を発展させ,対立仮説領域が連結ではなく二つに分かれる場合について考察し,マッチング事前分布との関連を議論した.片側検定のp-値,両側検定のp-値,およびベイズ事後確率を含むような信頼度のクラスを考察した.この場合,ベイズの事後確率が実は「zero-sided test」のp-値に相当するという解釈を得た.2.Rのライブラリとしてソフトウエアの試作版を作成した.このソフトウエアによって得られたp-値の不偏性をシミュレーションにより確かめた.3.機械学習のバギングをマルチスケール・ブートストラップ法で置き換えるマルチスケール・バギングが簡単な例題において動作することを確かめた.4.ブートストラップ法だけでなく,MCMCによるベイズ事後確率計算についても議論した.
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