研究概要 |
本研究は,入出力3相データ{x_<ijk>;i=1,...,I;j=1,...,J;k=1,...,K}に焦点をあて,それに適用できるPCA(主成分分析法)であるPCA-SEP(SEP),PCA-SUP(SUP),TUCKER2(T2),TUCKER3(T3),CANDECOMP-PARAFAC(CP)を体系的に精緻化することを目的とした.ここで,入出力3相データとは,I種の入力(刺激)が個体(被験体)kに惹起させる出力(反応)をJ種の指標で測定した結果であり,x_<ijk>は入力iに対する個体kの出力j(指標jにおける反応)の大きさを表す.達成された研究実績は,[A]統合プログラム作成と手法間の比較,[B]T2,T3の解の変換法の研究,[C]モデル選択規準の確立,および,[D]CPの退化解の回避に大別される.以下,[A],[B],[C],[D]ごとに実績を記す.[A]各PCAおよびそれに伴う統計指標計算をサブルーチンとして包含する統一化されたプログラムを,フォートラン言語によって作成して,SEP,SUP,T2,T3,CPを相互比較できるシステムを完成した.[B]T2とT3の解は,回転の自由を持つために,より解釈が容易な単純構造を持つ解に向けて回転ができる.この回転法として,以前に科学研究費補助金を受けて開発した同時プロクラステス法を利用する方法を開発して,シミュレーションによって良好な挙動が確認された上,実データへの適用でその有効性を示せた.[C]Ceulemans & Kiers(2006)の数値凸包モデル選択法に基づいて,SEP,SUP,T2,T3,CPの中から最適なモデルを選択する方法を完成させた.[D]CPの解の退化の頻発は,平成22年度後半に見いだされ,これの原因解明と対処の追求が,平成23年度への研究繰越の契機となったが,原因は,CPのモデルのパラメータ過少にあり,それへの対処法として,パラメータ行列の条件数を不等式制約する方法を考案した.
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